落ち込む、浮き沈みが激しい、やる気が起きない
落ち込む、浮き沈みが激しい、やる気が起きない
気分がすぐれない、落ち込んでしまう、悩み、心配事が頭から離れなくなる、考えがまとまらず堂々巡りする。そういった気分の不調の原因となる代表的なものが、うつ病と躁うつ病(双極性障害)の2つがあります。うつ病にかかる人の割合は6.5%であり、これは約15人に1人の割合です。決して珍しいものではありません。また、日本の場合、若年者に加えて中高年でもうつ病の頻度が高いのが特徴です。当院では、まずしっかりと症状やきっかけとなった出来事などを伺います。その上で、うつ病がどのようなものかを丁寧に説明し、ひとりひとりの状況に合わせて回復への治療を一緒に行っていきます。うつ病は50%の方が再発するといわれており、再発予防も大切です。
また、同じように抑うつ状態を引き起こすものとして、うつ病よりもより一過性である適応障害があります。他にも、ADHDや自閉症スペクトラムなどの発達障害をベースとして、仕事で支障が出たり、人間関係がうまく築けず自己肯定感がさがり、二次的に抑うつ状態になることもあります。
現代社会はストレスに溢れています。ストレスをうまく解消できず、心と体のバランスが崩れ、心身に不調をきたすことは誰にでも起こり得ます。
眠れない、食欲がない、一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめないといった状態が続いている場合は、うつ病かもしれません。
うつ病は、精神的・身体的ストレスが重なることなど、様々な理由から脳の機能障害が起きている状態です。脳がうまく働いてくれないので、ものの見方が否定的になり、自分をダメな人間のように感じてしまいます。そのため普段なら難なく乗り越えられるようなストレスも、より辛く感じられてしまうという悪循環が生じてきます。
うつ病は、うつ状態だけが起こる病気のことをいいますが、双極性障害とは、うつ状態に加え極端に活発に行動してしまう躁(そう)状態も現れ、「うつ状態」と「躁状態」を慢性に繰り返す病気のことをいいます。以前は「躁うつ病」と呼ばれていましたが、現在では両極端な病状が起こるという意味で「双極性障害」と呼ばれるようになりました。
躁状態では、眠らなくても活発に活動できる、次々とアイデアが浮かぶ、過度に自分は特別に能力が高いと信じこむ、気が大きくなりお金を使いすぎてしまうなどの症状が見られ、軽はずみに無謀な行動を取ってしまう結果、社会生活に支障をきたすこともあります。
うつ病は「うつを良くする」ことが治療目標ですが、双極性障害は、「躁・うつの波をいかにコントロールするか」が最大の治療目標です。
うつ病のきっかけ、原因にはさまざまなものがあります。1人の患者様のうつ病にも複数の原因があるのが普通です。職場、学校、家庭内のさまざまなストレス、悲しい出来事をきっかけにうつ病になることがあります。さらに、身体の病気や飲んでいる薬がうつ病を引き起こすことがあります。
うつ病の治療に用いられる抗うつ薬は神経伝達物質の量を増やす作用があることから、うつ病では、神経伝達物質の量が減って、神経の働きに不調をきたしていると考えられています。このような不調を背景に、うつ病では感情や意欲を司る脳の働きに何らかの不調が生じていると考えられています。
うつ病の治療には、対話を通して進める精神療法と抗うつ薬による薬物療法があります。うつ病の治療では、まず、心身の休養をしっかりとることが大切です。精神的ストレスや身体的ストレスから離れた環境で過ごすことが治療になります。職場や学校から離れ自宅で過ごし休養を取るだけで、症状が大きく軽減することもあります。薬物療法では、症状や年齢、副作用などを考えて患者様に合わせて処方します。
適応障害とは、ストレスが原因で引き起こされる感情の症状によって、ときに異常な行動に出たり、体調不良を起こしたりする病気です。適応障害の症状にはさまざまなものがあり、それらは受けているストレスや環境、性格などによって現れ方が違います。
適度な過度な不安から起こる症状には動悸や息切れなどがあります。また、何事も悲観的に捉えてしまったり、訳もなく憂鬱や喪失感に襲われたりすることもあります。会社に行こうとするとお腹の調子が悪くなったり、頭痛が起こってしまったり、腰や背中が痛くなるというように体調不良として現れることもあります。
適応障害は適切な治療を行えば治る可能性が高い病気です。ストレスの原因を突き止め、その原因となっているストレスを軽減する、適応しやすい環境に整えることや、場合によっては休職や休学をしてしっかり休養することで、心のエネルギーを回復することが必要です。
自らのストレスを認め、バランスの良い食事と十分な睡眠を取ることが大切です。ストレスに立ち向かおうとするよりは、気分転換をしたほうがよいケースが多いです。
パーソナリティ障害は、大多数の人とは違う反応や行動をすることで本人が苦しんでいたり、周りが困っているケースに診断される病気です。認知(ものの捉え方や考え方)や感情、衝動コントロール、対人関係といった広い範囲のパーソナリティ機能の偏りから障害(問題)が生じるものです。注意したいのは、「性格が悪いこと」を意味するものではないということです。
パーソナリティ障害には、他の精神疾患を引き起こす性質があります。パーソナリティ障害と合併したほかの精神疾患が前面に出ることが多いので、パーソナリティ障害は背後から悪影響を及ぼす黒幕のような病気だということができます。
治療は、障害のタイプ、重症度、患者様の生活スタイルなどに応じて行われます。患者様と医師の一対一で完結するものではなく、周囲のサポートや、心理士・ソーシャルワーカーなどの介入も有効です。
代表的な治療方法は、精神療法やカウンセリングです。感情、考え方、行動の仕方について学ぶことを通して、病気によって起こる問題への対処方法を身につけます。個別に行われることもあれば、同じ境遇にある方が集まって行われることもあります。また、症状の現れ方やタイプによって薬物療法が検討されます。医療保険で認められているパーソナリティ障害の薬はありませんが、実際に使用される薬には抗精神病薬などがあります。抗不安薬は自殺企図などに用いられる恐れがあり、抗うつ薬は情動を不安定にする恐れがあるため、投与は必要最小限にとどめられます。